官邸が炉心溶融を口止め?
朝日新聞によると 「東電は2011年3月の福島第一原発事故時、核燃料が溶けている可能性が高いと判断していたのに、「確認できない」などとして炉心溶融を2カ月間認めなかった。 この原因を検証した第三者委は16日の報告書で、清水正孝社長(当時)が「官邸側から炉心溶融を認めるのに慎重になるように要請を受けたと理解していた」と推認した。
これに対し、枝野氏は17日の会見で改めて指示を否定し、「東電の一方的な釈明を並べたもの。官邸関係者への聞き取りもなく、一方の当事者が自分に都合良く事実をねじ曲げて公表している」と調査の信用性に疑問を投げかけた。」 とある。 これは第三者検証委員会が東電に報告したものだが、表題にもあるように「官邸が炉心溶融を口止め」したと言っているのだ。
しかしよく読んでみると、第三者検証委員会は当時の清水正孝東電社長が「炉心溶融(メルトダウン)」という言葉を使わないよう社内、に指示していたと言う事の理由に「首相官邸側からの要請」だと推認している。 推認しているだけで、検証していないし関係者からの聞き取りもしていない。その理由に時間がなかったと言っている。 まるで、舛添元知事のいいわけと同じだ。もっとましな言い訳は無かったのか。 新聞には 「東電以外の関係者からの聞き取りを尽くさないまま、社長の指示は首相官邸側からの要請に基づいたものと推認されると結論づけたことも疑問だ。」 と疑問視している。 実際、一方の話だけを聞いて、推認して、結論づけるのは、誰が聞いてもおかしい。 裁判では証拠能力は無いだろう。
どうしてこんな変なことをするのかを考えたとき思い当るのが参院選。 安倍首相は「気を付けよう、甘い言葉と民進党」という演説のバカなフレーズにも現れている通りなりふり構ってはいられないのだ。 この件は民進党たたき、野党連合たたきに使われたのだ。
野党共闘に大きな焦りを感じている証拠だ。 野党を応援して、1/3以上の議席を獲得させたい。
この件に関して元検事の郷原信郎弁護士はブログで次のように述べている。(一部抜粋)
東電側には、「炉心溶融」の隠ぺいの意図はなく、技術委員会への対応は不適切だったが、それも原災マニュアルの判定基準を知らなかっただけで悪意ではない、東電の側ではなく、「炉心溶融」という言葉を使わないように指示した当時の(民主党政権の)「官邸」が悪かったのだという、思い切り「東電寄り」の認定を行っているのである。
「第三者委員会」として、独立かつ中立的な立場で行われた調査とは思えない。
そもそも、東電が「炉心溶融」という用語を意図的に避けていた疑惑が生じた発端は、3月 14 日夜の記者会見に臨んでいた武藤副社長が、その席上、東電の広報担当社員から、『炉心溶融』などと記載された手書きのメモを渡され、「官邸から、これとこの言葉は使わないように」との耳打ちをされたことが記者会見のテレビ映像に残されていることだった。 報告書は、テレビ映像に残された「手書きのメモを示しながらの耳打ち」と、それを行った広報担当社員が、その指示を清水社長から直接受けたと説明していることを根拠に、「官邸の指示ないし了承」を「推認」している。 つまり、客観的に明らかな「記者会見での耳打ち」の事実、つまり、調査の前提事実だけで、「官邸からの指示」という依頼者の東電にとって有利な事実を認定しているのであるが、この「記者会見での耳打ち」を「官邸からの指示」に結びつけることには、いくつかの重大な疑問がある。
第一に、「官邸からの指示」について、 清水社長に対しては、複数回のヒアリングを実施し、同社長に説明を求めたが、同社長の記憶が薄れている様子であり、明確な事実を確認できなかった。 また、清水社長に同行した小森常務らのヒアリングの結果からも、明確な事実を確認するには至らなかった、としているが、清水社長は、震災の2日後の3月13日に記者会見を行って以降、姿を見せなくなり、めまいや高血圧で入院するなどして、公の場に姿を見せたのは事故から1ヶ月目の4月11日だった。 つまり、清水社長が行った福島原発事故への対応は、極めて僅かなものでしかない。 そのような清水社長が、「炉心溶融」という言葉を使わないように官邸から指示を受けたのだとすれば、それは強烈に印象に残っているはずだ。 「記憶が薄れる」などということはありえない。 重大な原発事故を起こした企業の経営トップでありながら、長期にわたり公の場に現れないなど無責任極まりない対応を行った清水社長の説明は、到底鵜呑みにすることはできないはずだ。
第二に、この時広報担当者は、なぜ、武藤副社長に手書きのメモを渡す際に、わざわざ、マイクに音声が残るような「耳打ち」を行ったのであろうか。 もし、本当に官邸側からそのような指示があったとすれば、そのようなことは、むしろ、絶対に秘匿しようとするのが通常のはずだ。 それを、手書きのメモで伝えるだけではなく、わざわざ声に出して「官邸からの指示」のことを伝えるだろうか。 なぜ、そのような無神経な「耳打ち」が行われたのか、そのような武藤副社長への伝え方も清水社長が意図的に指示したのではないかという疑問もある。 これらからすると、「炉心溶融」という言葉を避けるというのは、清水社長自身の意向で、それを官邸側に責任を押し付けるために、「官邸からの指示」の事実を「創作」した疑いもないとは言えない。 その点も含めて、十分な事実解明を行わなければ、「官邸からの指示」など「推認」できないはずだ。
専門家も「官邸が炉心溶融を口止め」に関しては疑問を呈している。
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