日々雑感

               
<<前のページ(7月) | 次のページ(9月)>>
14. 8.30(土) 

朝日新聞が面白い 2 

今日は 国連人種差別撤廃委 日本に「ヘイトスピーチ 対処勧告」と一面にあった。

ヘイトスピーチを煽るデモやネットやメディア、政治家などの発言があるので、無くすためにきちんと対処しなさいとの勧告だ。具体的には「日本は司法レベルでの対応が不十分だ」と指摘し、そのうえで、これを法的に取り締まるため、刑法などの見直しをしなさいと言う事。

新聞には「勧告には法的拘束力はないが」とあるが、日本は人種差別撤廃条約を批准しているから勧告があるのではないのか。勧告を実現する義務が日本にはあるのではないかと思う。

この勧告に基づく政府の動きを期待したいのだが、昨日の新聞に

自民党は「ヘイトスピーチ対策等に関する検討プロジェクトチーム」の初会合を開いた。

高市早苗政調会長は街宣活動について「党本部にいると、何時間も仕事にならない状況が続くことがある。」と指摘。プロジェクトチームでは、「反原発のデモなどは規制の対象にならないのか」との意見も出た。

とある。なんという事だ。

国連人種差別撤廃委の勧告を利用して、国会周辺の反原発のデモなどを規制しよう考えている。

ヘイトスピーチは差別的憎悪表現のことで、特に在日韓国、朝鮮人を罵倒するもので、反原発のデモは国民の願いを訴えたものだ。

「韓国人を殺せ」などのヘイトスピーチデモと、反原発のデモとは根本的に違う。ヘイトデモは禁止されるべきもので、反原発のデモ等は規制されてはいけないものだ。

自民党の国連人種差別撤廃委の勧告に対する動きを注意して見守っていかなければならない。

14. 8.29(金) 

朝日新聞が面白い 

慰安婦問題の訂正記事に対するバッシングへの反撃なのか、ここのところ1面ではないにしても面白い。

27日の「A級戦犯らの追悼法要 首相 メッセージ送る」、28日の社説の「パブコメ制度 面倒を引き受ける」、「辺野古へだてる基地マネー」「戦争と慰安婦」 、そして今日の社説で「A級戦犯追悼法要 聞きたい首相の歴史観」について載っている。

私が関心を持ったのは、「パブコメ制度 面倒を引き受ける」と今日の社説の「A級戦犯の追悼法要」。

今日は「A級戦犯の追悼法要」について書く。追悼法要とは

連合国による裁判を「報復」と位置づけ、処刑された全員を「昭和殉難者」として慰霊する法要で、首相は「自らの魂を賭して祖国の礎となられた」と伝えていた。

メッセージを送ったのは高野山真言宗の奥の院(和歌山県高野町)にある「昭和殉難者法務死追悼碑」の法要。元将校らが立ち上げた「追悼碑を守る会」と、陸軍士官学校や防衛大のOBで作る「近畿偕行会」が共催で毎年春に営んでいる。

追悼碑は連合国による戦犯処罰を「歴史上世界に例を見ない過酷で報復的裁判」とし、戦犯の名誉回復と追悼を目的に1994年に建立。(朝日新聞)

菅官房長官は安倍首相の行動に対して、「私人である」とコメントしているが、日本を戦争に導き、破滅させたA級戦犯を「祖国の礎となられた」と崇めたり、東京裁判を「歴史上世界に例を見ない過酷で報復的裁判」とするなど日本の首相のすることではない。

東京裁判を、「当時の日本の指導者たちは昭和天皇を戦争責任から守り、天皇制を維持するために、歓迎したのだ。いわば東京裁判はマッカーサーと日本政府の合作だったのだ。」と天木 直人 氏は言っている。

実際、東京裁判を否定すれば日本は国際社会の中でますます孤立するだろう。

安倍首相の魂胆は、憲法9条の解釈改憲で集団的自衛権を行使できるようにしたり、A級戦犯を崇めたり、戦車に載って喜んだり、靖国神社に参拝したりしているので、国民に戦争をさせたくて仕方がないように思える。

自分一人が戦地に行って敵陣に攻め入るのならまだ考えられるが、自分が安全なところにいて若者を戦争に行かせ、若者が死んでいくのは許されない。

本当に朝日新聞の言うように、「首相の歴史観を聞きたい」。

14. 8.26(火) 

訂正 

「大事なことが新聞では1面でなく34面に載っている。新聞も腐っている。」と書いたが、朝日新聞では社説で取り上げていた。新聞の顔というところで取り上げているのに 知らなかったとはいえ大変な失礼だった。

社説には次のように載っている。

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設工事に向けたボーリング調査が、海上保安庁や沖縄防衛局による厳戒態勢のなか、移設予定地の名護市辺野古の海で始まった。  

小船やカヌーによる海上での抗議行動に対し、体を押さえたり、羽交い締めしたりして強制排除する当局の姿勢に、県民は反発を強めている。  

きのう、辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前で主催者発表で3600人が参加し、移設反対の抗議集会があった。  

沖縄各地から県民がバス30台以上を連ねて集まった。家族連れも目立つ。経済界からの参加者の姿もあった。  

「この海に海保の船がびっしりと浮いている様子は、69年前、沖縄を占領するために軍艦が取り囲んだ光景と同じ」  集会で稲嶺進・名護市長はそう指摘した。  

実際に「海から艦砲射撃を受けた沖縄戦を思い出す」と話す年配者もいる。その心情を、政府は想像してみるべきだ。  

海保は海に張り巡らせた浮き具に抗議船を近づけない理由を「危険だから」とする。一方で、浮き具の内側では米軍関係者とみられる人々が海水浴をしているのに、警告もしない。  

県民には、沖縄に米軍基地を置くことの説明に政府が使う「抑止力」が信じられない。  

軍事技術が高度化したいま、沖縄に基地を集中させるのが必要不可欠なことなのか。新型輸送機オスプレイを佐賀空港に暫定移転させる計画は、必ずしも沖縄に集中させる必要がないと政府自らが認めたことになるのではないか。  

すべてのもとは、国土の0・6%しかない沖縄に、米軍基地の74%が集中する不公平な実情にある。そもそも沖縄の海兵隊は、復帰前に反基地運動が激化した本土から移駐した。  

この不公平を承知のうえでなお、沖縄に新たな基地をと言うのなら、少なくとも辺野古の掘削調査は中断し、県民の疑問に誠実に答えるべきだ。  

沖縄では11月に県知事選があり、辺野古移設が最大の争点になるとみられている。政権側が知事選を有利に戦いたいという意図で調査を強行したとすれば、現状では逆効果だというほかない。  

22日に移設断念の意見書を可決した那覇市議会に続き、県議会も抗議決議を検討する。保守陣営も含め、政府との溝は深まる。力ずくの権力行使は禍根を残すばかりだ。沖縄に理解される説明ができないなら、辺野古移設は凍結するしかない。

14. 8.24(日) 

燕岳に登ってきた。その他色々。 

19日,20日の一泊で燕岳に登ってきた。一緒に登った人で弱い人がいたので余裕で登れた。天気は良くなかったが、ブロッケン現象が見れて良かった。

詳しいことは「山旅」のページにあります。

今日、特別秘密保護法のパブリックコメントの締切日だった。反対だが、上手く書けないので出せなかった。文章力のなさを痛感する。

新聞に「辺野古移設 怒りの人波」と34面に載っていた。どうしてこれが1面でなく34面なのか。沖縄の人が大半反対しているのに、政府が住民の意思を無視して 事を進めるのは大問題だ。

 国連人種差別撤廃委員会は20、21の両日、日本の人種差別状況について審査し、次のように強調している。

米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設などに関して、委員からは

「地元に関わる問題は事前に地元の人たちと協議して同意を得ることがとても重要だ」「政策に地元住民を参加させるべきだ」。
「沖縄の人々の伝統的な土地、資源への権利を認め、それを十分に保障し、彼らに影響を与える政策については、その策定に参加できるようにすべきだ。
特に米軍基地の問題については初期の段階から地元住民の参加が大切だ」

以上琉球新報より

これはやはり民主主義の問題だ。

国連人種差別撤廃委員会は政府は住民の意思を尊重しなさいと言っているのだ。

こんな大事なことが新聞では1面でなく34面に載っている。新聞も腐っている。

14. 8.14(木) 

燕岳目指して(2) 

今日、雨が止んでから金剛山に登ってきた。

燕岳登山までに5回は金剛に登ろうと思っていたが、今日の登山で4回だ。そして最終になった。

あとは体の調整をして燕岳に登ることになる。

頂上の斜面にトリカブトが咲いていた。青空に映える鮮やかな紫色をしていた。

14. 8.12(火) 

徴兵制 

今日の新聞に徴兵制?とあった。私は以前に Face Book に次のように投稿していた。

6/30
新聞に「集団的自衛権 閣議決定あすにも」と載っている。
明日で、憲法第9条が変えられ、日本が戦争に参加することになる。
これで自衛隊の入隊希望が減り、やがて徴兵制がひかれ、今の若者以下赤ん坊が戦争に行くのだ。
若者や赤ん坊を持っているお母さんたちからの反対の声があまり聞こえないのが不思議でならない。

7/10
さっき、朝日放送の「そもそも総研」で徴兵制の事をやっていた。
集団的自衛権が閣議決定されたから、やがて徴兵制が敷かれるだろうと。
以前私も徴兵制について書いたが、今は少し違ってきている。
今の若者は、正社員になれないで派遣社員が多くなっている。この状況で、就職口が自衛隊しかないようになってしまったらどうなるかと考える。
アメリカではこれと同じ状況で戦地に行くことが起こっているらしい。
ただ昨今の人手不足がこれに歯止めをかけるかもしれないので杞憂に終わるかもしれない。
そうなるとやっぱり徴兵制か。

新聞には徴兵制と経済的徴兵制、どちらの事も載っていた。

徴兵制だけでなく、集団的自衛権と憲法の解釈改憲、特定秘密保護法、武器輸出解禁、あと一つ法律名を忘れたが危険な法律が国会に出ているものや、原発に関する諸問題など重大な問題が山積している。

私たちは忘れずに追及していかなければならない。

われらが「くるくる王子」徹君が、朝日新聞の件ではしゃいでいるみたいだが、従軍慰安婦について前々回書いたので、無視。

14. 8. 9(土) 

地下汚染水放出 

昨日は、face book で

インターネットのブログを見ていると「安倍首相、広島の平和祈念式典スピーチが去年と同じだった」という記事があった。 下の写真にある通り本当だった。 世田谷区議会議員の人が告発している。 一国の代表である首相がこの程度とは分っていたが悲しい限りだ。

と投稿した。

その後新聞を見ると1面トップに福島第一原発の「地下汚染水処理」「海に放出 地元は懸念」とあった。

内容もさらっと書いてあるけど、私が読んでいる「ハッピー」さんのツイッターでは大きな問題が指摘されている。

「ハッピー」さんは以前にも書いたが、福島第一原発で収束作業に当たっている人で、「福島第一原発収束作業日記 3.11からの700日間」という本を出版した人だ。

以下ハッピーさん8月7日のツイッターより

東電はサブドレンの汲み上げた水は汚染水という言葉は絶対使わなくて、必ず地下水と言うんだ。東電は建屋の中の水だけ汚染水と位置づけてて、その他は汚染してても雨水とか地下水って言うんだよね。 汚染地下水を浄化し海へ 東電が計画

今日のサブドレンの件でちょっと勝手につぶやくでし。オイラ以前にもつぶやいてるけど地下水バイパスは建屋流入量を減らす効果を期待するよりも、まずは何としてでも海に流す既成事実をまず作りたかったと思ってるんだ。実際、地下バイが稼働しても建屋流入量が減ってる気がしないしね。

続1:また12本の井戸から汲み上げてる地下水のうち例え何本かの揚水井が目標値より汚染してても、きれいな地下水と同じタンクに入れて希釈すれば海に流せるって実績も既に出来上がってしまったし…、オイラはそれが第一の目的だったと思うんだよね。

続2:そして今日出てきた話がサブドレンの浄化後の海洋放出。これは確かに今でも浄化後処理水の行き場が決まってないし配管もつないでないんだ。実際に稼働してみてサンプリング結果を見てから決めるのだと思う。オイラの勝手な見解で話すると、結果によって行き先は三つ考えられんだよね。

続3:まずトリチウム含め告知濃度未満なら直接港湾内に流す。96000べクレルのトリチウムを心配する人もいるけどサブドレンピットから汲み上げた水は集水タンクに貯められる、その時点でトリチウム濃度はかなり下がるはず。上手く汲み上げバランス調整すれば告知濃度未満になるかもしれないんだ。

続4:次にトリチウムが告知濃度以上の場合は浄化処理後のサンプルタンクにきれいな別の地下水を混ぜて希釈するか、もしくは地下水バイパスタンクまで配管をつなぎ合流させ希釈して海に放出するかの方法。いずれにしてもどうやって世間の納得いくような方法で希釈するかが課題だけどね。

続5:最後の行き先パターンはトリチウム以外の核種が除去出来なかった場合。この場合の処理水はアルプスに繋ぐしかない。アルプスでトリチウムだけになれば、希釈して海洋放出するはず。これも希釈する方法が課題だけど、いずれアルプス処理水は海に流すはずだからすでに考えてるかもね。

続6:たぶん東電や国の目論見としては、地下水バイパス、サブドレン、アルプスの順番で段階的に処理水を海洋放出したいはずなんだけど、サブドレンでもし核種除去出来なければ、一気にアルプス処理水の海洋放出に話がいくんじゃないかなぁって思うんだよね。

続7:とにかくサブドレン処理水を貯めるタンクなんて最初の計画からなかったし、今の90万トンタンク計画には入ってないから海に流すか汲み上げを止めるしか選択肢はないんだ。汲み上げを止めれば凍土壁も完成しないから必ず流すようにすると思うけど、かなり揉めるし長引く可能性もあるよね。

続8:いずれにしても告知濃度未満なら海に流せる国の条件ならば、国や東電は希釈して海洋放出する方法を考えるはず。年間の総量規制でもあれば別な話になるけど、今のところないしね。でも最近の色んな収束作業の発表って正直じゃないというかズルいっていうかスッキリしないものばかりでし(>_<)

終:もっと全て計画段階からオープンにすればいいのになって思うのはダメなのかなぁ…。いやいや久しぶりに長々と勝手な見解をつぶやいてしまったでし。あくまでオイラの勝手な意見や思い込みなのでサラッと受け流して下さいね。でわでわ。

(ハッピーさんのツイッターは https://twitter.com/Happy11311.html で検索してください。)

新聞だけを読んでいては考え付かないことです。考えさせられます。

14.8. 7(木) 

従軍慰安婦について 

昨日、一昨日と朝日新聞に従軍慰安婦についての記事が特集された。

従軍慰安婦が話題になったのは昨年の橋下の

「「強制連行を認めると、世界からは日本だけが特殊な性奴隷を活用したと評価されるのだ。」(2013年5月17日 橋下徹 )

「なぜ日本だけが性奴隷を活用していたと攻撃されるのか。それは日本だけが女性を強制連行していたとされているからだ。アメリカは、慰安婦を強制的な性奴隷と表現している。」(2013年5月17日 橋下徹 )」

のツイッターでの発言からだ。

「従軍慰安婦は性奴隷ではなかった」という人たちが問題にしているのは、

@狭い意味でに強制連行はなかった。だから従軍慰安婦は性奴隷ではないと言う事。

A秦という人は、「慰安婦はインドネシアでは高給を取って優雅な暮らしをしていたから性奴隷ではない」と言っている事。

世界が問題にしているのは、「強制連行」という部分的なことより、「前借金という名の人身売買により身体を拘束され、自分のことを自由に決定する権利および移動の自由などが一部あるいは全部制限され、隷属状態で所有物として扱われる状態を奴隷状態と言います。人身売買の事実がなかった場合でも、最終的に慰安所のような拘禁施設で継続的に性行為を強要(強制売春)される状態ならば性奴隷状態と言います。 さらに「最終的に強制的な性的活動に至る強制労働も含まれる。」とありますが、1996年に、国際労働機関(ILO)の条約勧告適用専門家委員会は、慰安所での女性たちの状態が1930年の「強制労働条約 第29号」(日本政府は1932年に批准)に違反していると認定」ということだ。

@については河野談話では狭い意味での強制連行は確認できなかったが広い意味での強制はあったと言っている。狭い意味での強制連行はオランダ人の件や、インドネシアではあったことが資料としてある。

またAについては、2013年06月13日(木)「秦郁彦さん、吉見義明さん、第一人者と考える『慰安婦問題』の論点」がTBSのラジオで放送され、秦郁彦さんのAの件は論破されている。

その様子は以下の通り。

秦郁彦

内地の公娼制をね、これ、奴隷だということになってくると、そうすると、現在のオランダの飾り窓だとか、ドイツも公認してますしね、それからアメリカでも連邦はだめだけれどネバダ州は公認してるんですよ。これは皆、性奴隷ということになりますね。

吉見義明

それは、人身売買によって女性たちがそこに入れられているわけですか?

秦郁彦

人身売買がなければ奴隷じゃないわけですか?志願した人もいるわけでしょ。高い給料にひかれてね。

吉見義明

セックスワークをどういうふうに認めるかということについてはいろいろ議論があって難しいわけですけれど、少なくとも人身売買を基にしてですね、そういうシステムが成り立っている場合は、それは性奴隷制というほかはないじゃないですか。

秦郁彦

自由志願制の場合はどうなんですか?

吉見義明

それは性奴隷制とは必ずしも言えないんじゃないでしょうか。

秦郁彦

公娼であっても?

吉見義明

それは本人が自由意志でですね、仮に性労働をしているのであればそれは強制とは言えないし、性奴隷制とも言えないでしょうね。

秦郁彦

日本の身売りというのがありましたね。それで身売りというのは人身売買だから、これはいかんということになってるんですね、日本の法律でね。

吉見義明

いつ、いかんていうことになってるんですか?

秦郁彦

人身売買、自体はマリア・ルス(マリアルーズ)号事件の頃からあるでしょ、だから。

吉見義明

それはあの〜確かにあるけれど、それは建前なわけですよね。

秦郁彦

建前にしろですね、人身売買ってのは、だいたい親が娘を売るわけですけれどね。売ったという形にしないわけですよね。要するに金を借り入れたと、それを返済するまでね、娘が、これを年季奉公とか言ったりするんですけどね、その間、その〜、性サービスをやらされるっていうことなんでね。 それで、娘には必ずしも実情が伝えられてないわけですね。だからね、しかし、いわゆる身売りなんですね。

荻上チキ

(着いてみたら)こんなはずじゃなかった、という手記が残っているわけですね。

秦郁彦

う〜ん騙(だま)しと思う場合もあるでしょう。ね。

(中略)

だからね。これは、う〜ん、なんていうかな、自由意志か、自由意志でないかは非常に難しいんですね。家族のためにということで誰が判定するんですか。

吉見義明

いや、そこに明らかに金を払ってですね、女性の人身を拘束しているわけですから、それは人身売買というほかないじゃないですか。

荻上チキ

ちょっと時期は違いますけれどもね、『吉原花魁日記』とか『春駒日記』とかっていう、昔の大正期などの史料などでは、親に「働いてこい」と言われたけど、実際に働いてみるまでそのことだとは思わなかったケースもあったりすると。

秦郁彦

うん、そうそう。

荻上チキ

それは、親も敢えて黙っていたかもしれないし、周りの人も「いいね、お金が稼げて」と誉のように言んだけども、内実を周りは知らなかったっていうような話は色いろあったみたいですね。

吉見義明

実際にはあれでしょ、売春によって借金を返すというシステムになってるわけでしょ?

秦郁彦

今だってそれはあるわけでしょ。

吉見義明

それは、それこそ人身売買であって、それは問題になるんじゃないですか?

秦郁彦

じゃぁ、ネバダ州に行って、あなた、大きな声でそれは弾劾するだけの勇気がありますか?

吉見義明

もしそれが人身売買であれば、それは弾劾されるべき。

秦郁彦

志願してる場合ですよ、自発的に。自発かね、その〜どこで区別するんですか?

吉見義明

何を言ってるんですか、あなたは?

秦郁彦

え?

これは当時の公娼制度に関連したやり取りだが、秦氏が当時の日本での人身売買を基礎にした公娼制度と、現在の様々な法令によって女性の人権がある程度、保護されたうえで公認されている売春を同列に語っていることにまず驚く。

このやり取りを聴いただけでも、秦郁彦氏が「自由売春」と、犯罪である「強制売春」の区別がついていないことは明らかだろう。いや、わかっていてわざとそこに触れないよう回避していると見るべきか。

そもそも秦氏は1999年の著書『慰安婦と戦場の性』のなかで、公娼制度とは「まさに「前借金の名の下に人身売買、奴隷制度、外出の自由、廃業の自由すらない二〇世紀最大の人道問題」(廓清会の内相あて陳情書)にちがいなかった(同書p.36)」と公娼制度が奴隷制度であることを認めていた。

さらに同書では、「「慰安婦」または「従軍慰安婦」のシステムは、戦前期の日本に定着していた公娼制の戦地版として位置づけるのが適切かと思われる。(前書p.27)」と述べていた。

この論理なら、「公娼制度の戦地版」である慰安婦制度も同様に奴隷制度という認識になるはずである。ところが今回の吉見義明氏との討論では、最後まで公娼制度や慰安婦制度が奴隷制度であることを認めることはなかった。

とはいっても秦氏はこの後(後段の文字起こし部分)で、朝鮮半島から慰安婦として動員された女性たちの「大部分」が「誘拐や人身売買」の被害者であることまで認めた。そして、身売り=人身売買の被害者は「借金を返す」までの期間、身体を拘束され性行為を継続的に強要される状況にあったことも認めている。これは暗に奴隷状態であったことを認めているに等しい。

国際的な定義では、こうした他者の支配下に置かれ、自分のことを自由に決定する権利が奪われ所有物として扱われる地位や状態は奴隷状態であり、こうした状況で継続的に性行為を強要される状態を性的奴隷状態と定義しているのだから。

引用は以上。

詳しくは秦郁彦さん、吉見義明さん、第一人者と考える『慰安婦問題』の論点 を見てほしい。

また、秦郁彦が言っている「従軍慰安婦は拘束されず、高給を取っており優雅な生活をしていた」ことについては次の対談の部分が参考になる。

従軍慰安婦は優雅な生活だったか
(これは対談を書き起こしたもので1から5まであり、そのうちの4。上の背景色の違う部分は1から5の内の2の後半部分。)

結局、秦郁彦は吉見義明に論破されている。

それでも朝日新聞で、秦郁彦は知らん顔をして、Aを繰り返していることになる。